男性の産休制度が閣議決定されました。
子どもの誕生から8週間は夫が柔軟に育休を取れる制度「出生時育児休業」(男性版産休)を新設し、企業に対しては従業員への育休取得の働き掛けを義務付けることになります。
男性版産休の制度スタートは2022年10月。取得働き掛けの義務付けは2022年4月からです。
さてこの記事では
男性産休ってどんな制度?
育休との違いは?
お金はどうなる?
こういった疑問に答えるため、男性産休制度を徹底解説すると同時に、男性産休制度の問題点も提示します。
男性産休制度の概要は?
対象期間、取得可能日数等
子の出生後8週までの間
要件・手続き
現行の育児休業と同様、労働者の申出により取得できる権利があります。
つまり、会社は取得を拒否できません!
労働者の申し出期間は次の3パターン。
産休期間の分割
8週間の間の休みを2回まで分割して取得することが可能
たとえば産後から1週間、里帰り後に2週間という取得ができるようになります。
男性産休中の就労
労働者と会社との合意に基づき可能となる
育児休業申出者に対する働きかけ等
男性の産休・育休を促進するために企業は次の義務が課せられます。
育児休業取得率の公表の促進等
従業員 1001 人以上の企業に、男性の育児休業等取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率の公表を義務付けられます。
男性育休との違いは何?
男性産休が入ったからと言ってそれほど変わりません。
基本は男性育休はこれまでと変わらず子が1歳になるまでの間に取れるものなので、そのうちの最初の8週間が男性産休に置き換わるだけです。
強いてあげるなら次の3点が違いです。
休業開始日を柔軟に変更できる
これまでの男性育休は1ヶ月前に開始日を申告する必要がありました。
しかし実際は出産日というのは変動します。
そのため、子どもが予定よりも早く生まれた場合でも育休に入れないという問題がありました。
今回はその問題点を解消するため、1ヶ月前申請と変更は1回までというルールを撤廃することにしたということになります。
分割して取得できる
これまでの育休も最大1年間の育休の中で、生後8週とそれ以外に分割して取得することが可能でした。
今回の男性産休制度では生後8週の中で2回に分割することができるようになっています。
それに加えて産後8週経過後の育休期間でも2回まで分割して取得することができるので、合計4回に分けて取得することができるということになります。
望む条件の範囲で就労できる
今回の制度の最大のキモかもしれません。
男性産休では労働者が示した範囲で就労できるようになります。
このため、たとえばまだ産院に入院している間は午後だけ働く、といったような柔軟な働き方ができるようになるでしょう。
男性産休中の手当は?
男性産休中の手当については現時点で発表されていません。
しかし、男性産休と言いながらも今回厚生労働省の資料ではあくまで『育休』制度の派生系ということになっています。
そのため育休同様に『育児休業給付金』の対象になると考えるのが自然でしょう。
ただし、気になるのは就労した場合に育児休業給付金が払われるかどうかです。
実はあまり知られていませんが、従来の育児休業給付金も一定時間以内の就労であれば支払いの対象となっていました。
そのため、今回の男性産休についても一定時間以内の就労であれば満額支払われる可能性はあると思います。
続報を期待しましょう。
男性産休制度の問題点
ここまで新設される『男性産休制度』について解説してきました。
ここからは男性育休取得者の僕から見た男性産休制度の問題点を挙げていきたいと思います。
産休取得は義務ではないこと
今回の制度新設では産休取得は義務付けされていません。
義務付けられているのは労働者へ取得を促すこと、取得率を公表することです。
産休・育休は希望すれば取れるということは、裏を返せば『希望していないことにさせれば取得させなくてもよい』ということになります。
現状の男性育休でも希望者は必ず取れることになっていますが、取りたいと思っている人が8割もいるのに実際の取得は1割もないのはそういうことです。
したがって、いくら分割して取ることができようが取得すらできない現状を変えるまでには至らないでしょう。
そしてもし取れるとしても1週間程度取得して『男性育休取得率○%』の算定に使われてオワリという人が量産されることでしょう。
これでは男性産休を新設することで問題が解決するとは思えません。
ちなみに僕は男性育休の義務化自体もいいことだとは思っていませんが。
産休中に就労できることも問題
就労を認めるということは、
産休・育休を取ったことにしながら働かせられる
という企業に取っては最高に都合の良い状態が発生します。
これも制度としては「労働者が希望した範囲内で」ということですが、これも企業が「この範囲と言うなら取らせてあげてもいいよ」という条件をつければいくらでも曲がります。
労使の力関係からいっても、暗黙の運用が行われるのは想像にかたくありません。
見た目の産休・育休取得率がバク増しながら、裏ではみんな家で働いているという状態になる可能性があるということです。
特に最近はテレワークができる企業も増えていることからますますその運用が行われる土壌ができつつあります。
最初からこれ狙いだとしたら厚生労働省もなかなかワルよのぉ
申告期限を撤廃してもほとんど意味がない
今回1ヶ月前の育休申告を撤廃し、最短1週間前までに申告すればいいということになっています。
しかし1ヶ月前ですらいきなり言われて
「あ、1年休むのね、了解!」
となる職場ってあるのでしょうか?
僕が勤めているのは日本でも有数の大企業ですが、それでもムリだと思います。
そして何より子どもが産まれることは10ヶ月前くらいからわかっていますので、普通はさっさと職場に言うのが常識的な対応です。
この制度を考えた人は、一緒に働いている人がいきなり1週間後から1年休むと言い出しても大丈夫なのでしょうか?
サービス残業が横行していると噂の厚生労働省の官僚ですよね?
出産日が前後するのに対応するため、と言っていますが、明日いきなり出てくることもあるのにどうやって1週間前に予知するのかも疑問です。
僕が推奨しているように、出産後から育休を始めたいならまず希望日あたりから有給休暇を埋めればこのあたりの問題は全部解決します。
有給休暇であれば会社との話だけなので、多少削っても増やしても大丈夫です。
そしてまず間違いなく生まれているあたりの日から育休の開始日を申請しておけばよいのです。
したがってそもそも代わりの解決策があるのに新しい制度にする意味が見当たりません。
有給休暇を使わせない会社ならそもそも育休なんて取れるわけがありませんしね。
で、里帰り出産との兼ね合いは?
僕が男性育休を取得するかどうかにあたって実は盲点になっていると指摘しているのが「里帰り出産」。
里帰り出産を選択した上で、生後すぐに男性も産休を取るとなったら妻の実家に居候することになります。
これもいきなり
「生まれてから8週間お宅でお世話になります」
となるわけがないw
そんな義理の息子いたらしばき倒すわ!
おおよそ出産の3ヶ月前には里帰り出産をするかどうか決める必要があるのに、男性育休の申告は2週間前まで。
いや、出産3ヶ月前までに育休取るかどうか決めてないと詰んでるって
ということなんです。
出生日のバラツキが問題なら無痛分娩に補助を出せ
無痛分娩なら出産日を決めて行うので出産日が変動することはほとんどありません。
僕の妻が出産した産院では差額10万円で無痛分娩を選択できました。
我が家の場合は1月26日が予定日でしたが、1月23日に分娩予約をし、実際にその日に生まれました。
しかし、同じ産院で産んだ妻の友達は10万円が払えなくて自然分娩にした人もいたそうです。
そもそも日本では無痛分娩がほとんど普及していません。
その理由はお金というより「出産はお腹を痛めて産むもの」みたいな人も結構いることに驚かされます。
最近出産したといっていた英会話の外国人の先生にそのことを言ったら
WOW!スーパークレイジージャパン!オールドファッション!
とゲラゲラ笑っていました。
出産日の変動が問題なら無痛分娩に補助を出してはいかがでしょうか?
まとめ
以上が新設される男性産休制度についての解説でした。
そもそも男性育休とそんなに変わる?
というのが率直な僕の感想ですが、これを機会に企業努力が向上すればよいのかもしれませんね。
くれぐれも『見た目の産休・育休取得率がバク増しながら、裏ではみんな家で働いている』という状態にならないことを祈るばかりですw
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